え ん

人生は連鎖する、

そんなやつの愛し方

 

 

 

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🌸
落とし物を拾いに来た。
 
 
現役で中退した大学に再び1年次から入学し、20代半ばも過ぎたこの一年間、
私はとても優秀な成績で修めたし、授業料免除の特待生も維持することが決定している。
母が倒れ、実家に戻ることを決意し、今はアルバイトをふたつ掛け持ちながら生活している。
 
 
この年齢で、
短大学士を持っていながら、
こんなにプレッシャーのかかる学業条件と家庭内の状況を抱え込みながら、
なぜわざわざこの大学に四年間いることを決意したのかと問われれば、私はもはや、こうしか言えない。「落とし物を拾いに来たんです。」
 
 
 
🌸
昔から不器用だと言われて育ってきた。家庭科の作品はどう頑張ってもへなちょこで見るも無惨な代物になったし、美術の授業では教師にため息をつかれた。合唱でもリコーダーでも、誰にも迷惑をかけないように、やってるフリだけは上手になった。高校で選択した書道は思い出したくもないし、体育は常に2だった。そんなんだから、当然、「生きる」ことも下手くそだった。
 
なんで「普通」ができないの、
「みんな」がやれてるから、誰もが難なくできることだから、「普通」っていうんでしょう。
それなのに、なんで私はいつまで経っても「みんな」になれないんだろう。
 
その違和感という雪玉は、どんどんどんどん大きくなって、どんどん私を追い詰めてきて、追いかけてきて、追いやってきて、すぐにそれは生きづらさとなった。そうして、何もかもを誰もかものせいにして、自分だけは逃れられたような、自分だけは赦されたような気でいたこともある。
 
 
 
私は病気である自分を必死に否定しながら、必死にそれにしがみついて生きてきた。
私は普通に生きられない自分を隠しながら、普通ではないレッテルに甘んじてきた。
 
 
 
🌸
もういいんだよ、と、
ようやく私は、今までの自分の肩を叩いて、抱きしめて、和解の握手して、その上でさようならを告げる準備が整って来たように思う。
 
この大学に、私はまさに、それをするために来たのだ。
 
 
もう私は完璧には生きられない。
もう私は普通にはなれはしない。
 
すぐに疲れるし、プレッシャーには弱いし、一つの小さな失敗に固執するし、飽きっぽいし、偉そうだし、自分にも厳しい代わりに人に対しても実はめちゃくちゃ厳しい。
常に褒められたいし、ちやほやされたいし、頭良いって思われたいし、理路整然と話ができる人って思われたいし、かっこいいって言われたい。嫌われたくない。でもそのくせ人間関係はすぐに面倒になっちゃうし、すぐヘラヘラしちゃうし、知ってるのに知らないふりして相手をわざとらしくヨイショさせちゃったりする。
なんか色々あるとたまに倒れたりなんかしちゃうし、今の自分を言い訳したくなっちゃうし、ものや大切な人にあたっちゃうこともあるし、部屋の片付けは相変わらず下手くそだし、失くしものは多い。
今よりも良くなりたいっていう向上心と、見えないものや背景に対する想像力と、新たな知識や教養に対する好奇心と、転んだらその転んだ先で石どころかダイヤモンドや真珠の一つやふたつ見つけてから立ち上がってやる根性がある。
 
そこに善悪とか勝負とか正偽とかいう価値を付加させないで、いいんだよ。
 
    私
私はそんなやつなんです。
 
  私
そんなやつのことを、
マアマア、落ち着いて。おめさん意外とよくやってるよ。偉い偉い。
んじゃとりあえずお茶でも飲んで🍵とか、ね、めっちゃ良い香りの香水買ったんだけど試してみない?とか言ってうまく宥めてあげて、
ほんじゃこのへん散歩してからまた挑戦してみるべ、って一緒に歩き出す。あ、あの人にちょっと頼ってみる? 餅は餅屋だぜ、なんて、コンサル業も兼ねている。
また疲れたら一緒に寝っ転がる。たまに美味しいアイス奢ってご機嫌を取らせてあげる。
 
 
             私
それが今の私ができる、そんなやつの愛しかたってやつだ。