今の自分へ
最近、周りの人たちを見て、不快な思いをすることが多くなった。
たとえば、
喫茶店でたまたま隣に座った女子高生たちの、クラスメイトに対する悪口。
母の職場の、進歩も生産性もない愚痴、駆け引き。
大学の友人たちの、人の話に耳を傾けることもなく、大切な決断をひとりで済ませてしまう態度。
私には全く無関係で、なにひとつ口を出す余地など存在しないはずなのに、ただ、ただ、胸のなかで、彼らに毒づき、貶し、不穏な気持ちになっている自分が、ここにいる。
なぜ、そんな気持ちになるのか、
私にはちゃんとわかっている。
彼らに非があるわけじゃない。
私は彼ら自身を馬鹿にしているわけじゃない。
彼らのひとつひとつのパーツに垣間見える、過去の私を、侮辱しているのだと思う。
正直、過去に起きたひとつひとつの出来事やトラウマとなっていたことを、今更引っ張り出してアレヤコレヤと、オヨオヨベーベーと記事に書くほど、今の私はヒマではない。本気で、本当に、本心から、どうでも良いとしか思っていないし、そこからの教訓や知恵なんて、あの経験をしてあの感情を抱いた私にしか通用しない。
だから、一応、過去のことは過去のことという認識に到達するところまでは、とりあえず行き着いた。
でも、私は、過去の自分を許すことが、今はできていない。
なぜなら、そこには、
確実に、言い訳を論破できる余地があったから。
判然たる、まだ少し頑張れる余力があったから。
明確な、支えや応援に応える余裕があったから。
要するに、
どんな綺麗な弁明で着飾っても、そして実際に壮絶な環境に身を置いていたことが事実でも、それでも、過去の私が、その環境を「利用」して、「甘え」ていたことは、認めざるえないことなのだ。
だから、反省以外にも、「後悔」をしている自分がいて。
そんな自分を許すことができないから、嫌で嫌でしかたないから、そんな自分とほんの1ミリでも似ている誰かを見て、不愉快な気持ちになるんだ。
彼ら(過去の私)に対して、言いたいことはたくさんある。
それは違うよ、って。
そっちの道に進むと、あんなことが待ってて、結果的にああなってこうなってそうなって、全て自分に返ってくるよ、って。
本当のとこは、今の自分の状態を変えるのは、今の環境を変えることじゃないってこと、わかってるでしょ?って。
だけど、私は、まるでハマグリのように、口を閉ざす。
自分の意思で自分の決めた道を自分の力で歩いて、そこで不幸や破綻があって、初めて人は方向転換を試みるものだから。
人から言われた言葉で本当に悟りを拓ける人なんて居ない。たとえどんなにその言葉が真理だったとしても、自分で確かめなければ、自分で痛い目を見なければ、人は絶対に気づけない。
私はひたすら沈黙する。
けれど、彼らの行き着く先を、私は知っている。
甘えるな、とは言わない。
むしろ、人はたくさん甘えるべきだと思う。適切な時期に適切な相手から適切な愛情を注がれなかった人間は、その後の人生も甘え方を知る機会が無い。見た目は十分な大人だとしても、そういう人はきちんと甘えられる環境を与えられるべきだ。
でも、だとしても、いつまでも生き物は揺籃のなかで過ごして生きていけるわけでもない。もう一踏ん張り出来たその時間を逃したひとは、その時間の分、何かしらのデメリットや被害を必ずどこかで被る。逃れたボールはいつか、かならず自分に返ってくる。
いつまでもそんな状態で居られると思うな。
今は必ず今じゃなくなるんだ。
今日は必ず昨日になる。
明日のノルマは今日のノルマになる。
少なくとも、
今、現実逃避したり、誰かに甘えたり、時間や身分のロスがあることに関して、どこかで罪悪感を感じている自分が、いるとしたら、それは、いつか必ず、後悔に変わる。
休むなら、辞めるなら、諦めるなら、逃げるなら、正々堂々本気で全身全霊込めて全速前進すべきだ。そこに罪の意識があるなら、今の道に未練があるなら、まだ頑張れる。いや、頑張らなきゃならない。
過去の私は、頑張らなかった。
頑張れるはずだった。頑張らなければならないはずだった。でも、頑張らなかった。
それは、どんなにひとから同情されても、慰められても、励まされても、事実だ。
今の私は、21歳。短大生。
もっと、もっと、もっと、もっと、高みに行ける。まだ、まだ、まだ、まだ、頑張れる。やれる。できる。
今の状態で高みに行けなかったら?
また、何かしらの空虚な綺麗な言い訳つけて、
もっと頑張れた「としたら」、高みに行けた「かもしれない」
本気を出した「としたら」、夢を叶えられた「かもしれない」
環境が整っていた「としたら」、理想の自分「かもしれない」
そんな自分に酔いしれて、またユメを見るのか?
いいかげんにしろ。
自分。
過去の自分を許す必要は、今はない。
でも、
未来の自分に許される生き方を選ぶのは、今しかない。
いいかげんにしろ。
今しかない。
今しかないんだ。