2017.08.13.

 
 
Nにサヨナラの挨拶をした。どうせ私のことだから、すぐにでもまた連絡を取ってしまうんだろうな、と思ったけれど、バイトが終わった今、そんなに浅い傷でもないことがわかった。ここで言う傷、とは、私だけの傷ではない。私が彼に対して向けた刃を、彼はおそらくゆるさないだろう。そして、私は、私にしかわからない傷があるのだ。今までも、これからも。
このまま、お互い何者でもない関係をだらだらと続けていても、どうせしあわせになんかなれやしない。一過性の優しさに準じて愛を感じるなんて、一夜限りのセックスのようなものだ。そして彼はそんな私に疲弊しきったのだろう。多少強引でも、これで良かったんだ。これが良かったんだ。そうでも思わなきゃ、この傷を私は穿り返すことしかできないだろう。彼と出会い、別れ、そして今日までのこの名もない関係に、私は永遠の蓋をする。だからもう、私は出来るだけNのことは考えない。出来るだけ。出来る、だけ。
 
鬼束ちひろの曲ばかりを聴いている。特に病んでいる時でない時でも聴いているけれど、改めて彼女の曲を聴くと、やっぱり彼女の良さと言うか、狂気という名のSOSを手に取るように理解することができる。いや、それは嘘だ。彼女の領域には私は入り込めない。そして同時に、彼女の曲を聴きこの感情を抱く私のなかにも、誰も入り込めない。当然だ。そして、それが正しい。
 
ヴァージニア・ウルフの日記と、彼女の夫に対する遺書を読んだのがまずかった。あまりにも、あまりにも私は彼女に近い場所にいる気がした。彼女が私の右肩にいる、そう思った。彼女は59歳で死んだ。数々の苦難やトラウマや壁を、乗り越えて乗り越えて乗り越えて、そして59年目で死んだ。つまり、彼女にも22歳の頃があったのだ。59歳で自殺した彼女にも、私と同い年だった頃があったのだ。
 
 
 
バイト先の同僚と初めて連絡先を交換した。
こういう関係は敢えて遠ざけてきたのだけど、彼女には心を許してしまった。未来の私はこのことを後悔するのだろうか。何したって、みんな行ってしまうのに、と。
 
 
疲れた。
寝る。
 
 

 

ある作家の日記 [新装版]

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