三日間の日記。

 

2017/08/03 thu

失敗や過ちの数だけ強くなれる、だとか、何事も経験になる、無駄なことなんてひとつもない、みたいな言葉がとても苦手だ。ただの捻くれ者、或いはこじらせ女子、ってだけだと言われたらそれまでだし、なんの異論もないのだけど、最近の私は特に「変化」「成長」「進歩」を怖れているような気がする。


以前は逆だった。昔からの私を知る友人に、「変わったね」って言われることが嬉しくて嬉しくて堪らなかった。そうでしょ、変わったでしょ、私は前の私と違うのよ、って、みんなにアピールしたかった。もし、今の私があの頃に戻れたら、きっともっと上手くやれたと思うの。そう言って、多くの別れや決断を悔いたり、その頃の私を軽蔑した。

でも実際、そこまで変わることにこだわる必要があったんだろうか。成長することに意義があったんだろうか。だって私が忌避する私にも、私を想ってくれる人はいた。私のことを応援してくれる人や肩を貸してくれる人はいた。それも、一人や二人じゃない。今考えれば、高校の頃のクラスメイトや部活の仲間たちは、私のことを本気で考えてくれていたじゃないか。先生は私を本気で想っていたじゃないか。


前の大学を中退してから、一緒にお茶した教授に言われたことがある。

「あなたはいつも、あなただけが傷ついたような顔して過去を語るけど、そんなこと決して無いから。あなたが入院していた頃、ずっとあなたの分のプリントをとっておいてくれていた同じ学科のあの子のこと、あなたは覚えてる? あなたが大学を辞めると決断した時、あなたを期待していた私がどんな気持ちになったか、あなたにはわかる?」


ーー私は、本当に、変わる必要があったのだろうか。

 


いや、変わらないままでいることなんて、実際は出来るはずがない。日々、人は生きている限り社会のなかで多くの人と出会い、関係を築き、何かを感じ、行動する。そうやって自分のなかで自分なりの考えや哲学はアップデートされていくものだ。今、こうしているこの瞬間にだって。

焦りすぎたのだろうか。
成長した結果や行き着いたゴールが明るくなければ、自分が思い描く最大限の理想像と合致していなければ、しかもそれは出来るだけ早急に達成していなければ、私はダメだった。ダメになってしまうと思った。再起不能。もう二度とどこにも行けない気がした。

わからないな、と思う。
焦って焦って焦って、ようやくたどり着いたこの地で、私はどこにも行けていない。何にもなれていない。

 

 

2017/08/04 fri

 

なぜこんなに上手くいかないのだろう、と考える。努力、という二文字にいつも追いかけられているような気がする。きっと、これは私だけじゃない。現代社会においては、経済的にも社会的にも精神的にもヒエラルキーの上位に立つものは、”努力” してきたからだ、という風潮がある。すなわち、下位の者は怠慢である、というわけだ。努力。努力。努力。それはそうなのかもしれない。資本主義における正義のヒーローはいつだって努力してきた。努力する上のエンジンが備わっていない人間は、そこでは抹殺されている。


とは言え、そんなことを言う権利は、おそらく私にはないだろう、どんな方法、環境、背景があったかなんて、関係ない。私は今、高等機関の学生証を持っている。六畳一間の私だけの住所も存在する。冷蔵庫のなかには少しの野菜も入っている。蛇口をひねれば毎日シャワーを浴びることも出来る。

何より、今の私の居場所のほかに、私には帰る場所も、待ってくれるひともいる。

何の不服があるだろう。
何の不足があるだろう。
何の不穏があるだろう。

今の私は、現代社会における努力論を語るより、さっさとその努力論に則ってただただコツコツと努力するしかないじゃないか。今の私こそが怠慢者だ。

 

 

2017/08/05 sat

昨日の20時から今日の5時にかけて、生まれて初めての夜勤のバイトをした。45分休憩が2回あったけれど、それ以外はずっと小走りで動きっぱなしだった。きっと怠慢者ではなかった、と思う。とても久々にブラックの缶コーヒーを飲んだが、水のような味がした。

6時頃に帰宅して、顔を洗い、炊飯器をセットし、バシャバシャと化粧水をつけて半ごろに眠った。目覚めたのが11時半だった。悪くなかった。シャワーを浴びた後、掃除と洗濯をして、炊き上がったご飯を食べた。今は14時。あと1時間半後はバイトへ行く時間だ。今日は22時まで働く。明日は21時まで働く。きっと怠慢者ではない、と思う。

 

最近、完全に思考能力が落ちている、という自覚が強くある。

入院していたときの感覚に少しだけ似ている。私の頭のなかから、ありとあらゆる語彙や計算能力がポロリポロリとこぼれる。難しいことが考えられない、というか、効率的に物事を解決するための手段が思いつかない、というか。難しいことを整理するための引き出しが、立て付けが悪くて開かない、というか。なんかよくわからないし、もちろん入院していた頃よりはずっとマシなわけだけど、ああ、ちゃんと勉強しなきゃな、と自戒した。図書館から借りた本も、延長手続きをしたにもかかわらず、まだ読み終わっていない。

 

この前、中学時代の恩師と飲んだ。何の話からそういう話になったのか、いまいち覚えていないのだけど、先生が、

「『公務員で良いよなあ』って、しょっちゅういろんな奴らに言われるけどさア、そんなこと言うんだったら、んなもんなれば良かったじゃん、って思うんだよね。」

と、生をぐびぐびしながら笑った。

きっと、私に対して、そう言ったんだろうな、と、思い返している。

社会科教員を目指していたのに、四年制大学そそくさと逃げ去った私。社会人もなりきれずに逃げて、今度もまた、短期大学で行き詰まりを感じている私に対する、先生なりの最大限の戒めだったのかな、と。いや、考え過ぎかもしれない。

 

とにかく、この先のこと、もっとちゃんと考えなきゃ、な。 14:27。あと1時間。